飛行ユニットがスキ。

 
 空を飛ぶ事が出来るから。


飛行ユニットがキライ。

 
 欲するものに近付く程に奈落へも近付く。



所詮人間に太陽は掴めないのだから。





●イカロスの翼●




 

 




ケロン軍参謀本部。
名前の通り軍編成にあたり『プレーン』と呼ばれる参謀役を配属する時はこの参謀局出身者が選ばれる。
軍編成の規模・侵略・交戦。あらゆる状況に応じ、参謀局内から人選を組むわけだが。

頭でっかちだったり。

マシンが友達だったり。

あまつには愛と勇気も友達に出来なかったりと。

どうにも問題児が矢鱈と多いのもこの参謀局の人間だったりもするわけで…。



参謀本部第2部諜略課。通称『第8課』課長室。

「何でだろうなぁ…」

諜略課課長を務める彼女はケロン星独特のマシンに管理された空を見ながら思う。


  
何でだろう?


 



「失礼致します大佐」

声で誰だか分かる。
軽いノックの後、入ってきたのは案の定。

「ガルル中尉殿の声はホントに一発で分かるよねー。
超渋キメ★って感じ」

ビシっと敬礼をする精鋭スナイパーの登場だ。
もデスクから一応軽く敬礼を返す。

「そうですか」
「その怖い顔、どうにかしてからもう一回入ってきてよ。私の部屋は生憎
眉間に皺を寄せた人間は立ち入り禁止】なもので」

フンワリとガルルに笑いかければ。

「失礼致しました」

眉間に皺がよっていたのか。特に気を勢でいるわけでもないのだが。
ガルルは深呼吸を一つ。

「大佐、この度の」
「元から皺なんてないよ。
バカ正直だね中尉って」


ニコニコ笑うにガルルが
心で盛大に舌打ちしたのは言うまでもない。


この女性はクルルと同じく、軍入隊直後に若いながらに異例の昇進をした立派なケロン軍の軍人だ。
ただクルルと違うのはケロン軍に迷惑を掛けていない。采配も人選も的確に突く。
彼女を隊長として軍編成をしていた頃のミッション達成率は
脅威の98%だ。隊員たちの生存率も極めて高い。
容姿も姿勢も何もかも。女性ながらに尊敬されるべき立派な軍人だ。変な話だが軍内に
非公認ファンクラブもある。
実力・実績、容姿に気品。全てに申し分ない彼女だが。


「ねぇ中尉。今日さぁ、参謀総長に呼ばれて何言われたと思う?」

人の話は全く聞かない。
というか、ガルルの話をまともに聞かない。
規律正しい軍人の鑑とも言えるガルルは、の中では完璧に
【いじりキャラ】なのだ。

同じく規律正しい女性軍人の鑑の彼女は、仕事の関係で殆ど表に顔を出す事は無いので本性を知られていない。


「……。大佐が総長殿に何か言われる事でも?」

したんだろうな、と思う。
仕事面では抜群の力を発揮する癖に、問題児でもある。元からそうだが、本部から参謀本部配属になってからパワーアップしている。
だがガルルは言わない。相手は大佐、自分は中尉。上級佐官と中級尉官であり5つも上の階級なのだ。

「その『大佐』って止めてくんないマジで。前みたいに名前でいいよ。課長でいいよ課長で。響きがソフトで明るい♪」
「しかし上官を相手にそのようなっ」
課長でいい。局じゃ課長だし。あ、それで。総長から無茶言われたんだ。どうしようこのストレス?」


ニコニコ笑いっぱなしの時のは大抵
随分な嫌がらせを思いついた時だ。
そのストレスをぶつける相手は自分だろうなとガルルが溜息を付く。
クルルの時といい、何故か自分は問題児上官の護衛役に付く事が多い。
上の話では
『軍人として正しい基礎を〜』と、なんたらかんたら。
確かに間違ってはいないと思うが、正直言い方変えれば
『子供の御守を押し付けられた』という所だ。
確実な実力とエリート街道直通エレベーターで来たに、護衛役など何故必要なのか任命された当初は全く意味が分からなかった。

合同作戦もやったことがあり付き合いもあったし、に何の問題があるのかと思っていたが。


  
初日で嫌に成る程分かった。


軍に迷惑を掛けないのは『全く問題ない』。軍への貢献度も素晴らしいものだ。階級も戦歴に見合うものを持っている。
ただし個人攻撃で相手の胃の風穴の開け方は『クルルの比では無い』。
少人数か個人をターゲットに
【いかに短時間で胃潰瘍で衛生局送りにするか】が趣味だ。
大人な分、やり方が非常にエグたらしい。
ただ彼女の仕事内容を考えればストレス発散も確かに必要となる。それだけ過酷だ。

だが、そのターゲットを自分にしないで欲しかったのが本音だ。


「あ、そうだ。中尉の用事って何?」
「大佐のストレスは後回しで宜しいのですか?」
「今日は『大佐』って呼ぶたびに悪戯レベルを上げていこう♪うん、いいよ?」


頭痛がする…。
だがガルルも意味無くこんな悪魔部屋に入ってきたわけではない。


「この度の侵略においてたっ…課長の選出されました参謀局者が素晴らしい成果を上げられたと言う事で」


の人選構成の仕方は本当に素晴らしいと言える。
相当な僻地侵略の先行部隊も参謀本部から出される者は必ず成果を上げる。それが小隊であろうが一個師団であろうが。
問題児の多い諜報参謀なのだが、部隊内でのトラブルはほぼ起きない。
まぁ実際は結構起きていると思うが、大体は隊長が許してしまうかを恐れて言う事は無い。

『デキ過ぎている』

 

そう言ってを敵性宇宙人のスパイと言うものも出るほどなのだ。
勿論そんな事は無いが。


「あー、その話か。それが問題なんだよね。ガルル中尉、
助けて
「助けて…と、申されますと?」
「コレ」

苦々しい表情でが一枚の紙をピラッとデスクから落とす。
触りたくもないほど嫌らしい。
がここまで嫌がる事とは一体何なのか?と、ガルルも興味がわくものだ。
護衛についてまだ短く、手綱がまだ握れていないのだから
上手くいけば…と、拾った紙を見れば。


「…辞令、ですか?」
「第2部の部長だってさ。今でも仕事ガツガツなのに…他の2部の課長達が黙ってる訳無いじゃん。馬鹿だようちの総長」


第2部は彼方此方の侵略相手の星ごとに課が存在する。今はメインを拾って6つ程。
だがの諜略課は特殊ケースを扱う完全なる別枠扱いと言って良い。

 

諜略課は、特殊軍内諜報略奪部隊。
扱う相手は自軍であるケロン軍。

 

 

の参謀本部入りと共にこの諜略課が立ち上がったのでまだ新しいが、裏情報がこの課を素通り出来た試しは無い。
軍の風紀が乱れない程度にが黙っているだけで、一声上げれば軍法会議なんて無視で死刑の人間も多いはずだ。
【清く正しく後ろめたい事をしていない軍人】には全く関係ないが、悲しいかなそんな人間は相当少ない。
正直やる事は参謀本部の仕事ではないが、あからさまに部を作る事も無くカモフラージュで
『第2部第8課』と名乗っている。
それがいきなり部長など…
特殊ケースの部隊であると、第2部の仕事は全く関係が無い。表の仕事も何をしてるか良く分からないというのに。

 


「昇進は誉れ高い事ですよ」
「軍人のステータスもありすぎるとただの足枷でしかない」

良い事を言っていると思わせておいて。
腹の中では『行動制限が掛かり過ぎて動き辛い!』という本音が
ガルルにはばっちり見えていた。
がグーッと身体を伸ばし、溜息を付く。


「参謀本部の部長って、軍部階級でどうなるか知ってる?」
「いえ、そこまでは」
「中将か少将だよ。ぶっちゃけ参謀次官殿と階級変わんない。変わんないなら次官殿の方が仕事少ないし楽だ」
「大佐、少々発言を慎んだほうが宜しいのでは…」

ここは参謀局のブロックなのだ。
誰が聞いているかも分からないのにズケズケと良く言うものだ。
だがガルルの心配を他所にがニッと笑う。


「今『大佐』って言ったね?んじゃ悪戯レベルを上げるとしよう」

しまったと思ってももう遅い。
瞬間、
バリン!と窓を割り飛び降りた。


大佐!?」

ここは5階なのだ。
あまりに突拍子もない行動にガルルが急いで窓まで走れば。

「−っ!?」
「上手く行けば
四階級特進だよ。でも私の本来の仕事を続けるには目立ちすぎる」

飛行ユニットを背負ったがガルルの目の前に来る。

「ガルル中尉は嬉しい?特進したら」
「っ、私は…。自分の実力に見合わない階級なら必要ありません。掴み取るものです」

ガルルの言葉にニコッとが笑う。

「ほーんと男って実力主義だよねぇ?口開けば誇りやプライドって。そういう戦闘遺伝子プログラムがあるって言うけど」
「大佐。貴女も…そうでしょう?」


  だから辞令を嫌がるのだろう?


「まぁねー。でも今の発言は私を『男』という風にしか捉えられないので悪戯レベル上げる。じゃあガラスの修理よろしく!」
「大佐!!」

が凄いスピードで外へ飛び立ってしまった。
局内鬼ごっこならいつもの事だが、今日はだだっ広い軍敷地内全部がフィールドだ。

「全く手間のかかる!!」

ガルルも急いで次元空間からユニットを取り出し部屋から飛び出した。













  
階級が上がる事は、誉れ高き軍人のステータス


「給料上がるのは嬉しいけど…使う暇も無いほど酷使される大佐なんて他にいないっつーの…」

佐官クラス以上ともなれば、よほど戦場好きでなければまず本部で無駄に遊び呆けるのが常だ。
高給取りの嫌なところだ。仕事もしていないのに多額の給料で遊ぶ。兵卒など薄給で激務に取り掛かっているというのに。
一体何の間違いで自分は今、この若さで『大佐』などと異例昇級をしてしまったのか。

 

あの日の生き残りだから?

 

 

「ったく、将官にでもなったら私がケロン軍乗っ取っちゃうよ」


  中将なら、あと四つで元師大将。ケロン軍の頂点じゃないか。
  嗚呼…馬鹿らしい。


自分専用に改造した飛行ユニットは上出来の動きだ。
中々立場上大っぴらに外に出られないので試験運転が出来なかったが、馴染み方もスピードも自分好みだ。
は兵器開発部では無いので
0から何かを作るのは目を見張る下手さだが、オリジナルから改良をするのが好きだ。
電子ワークやメカニックに強いのは流石参謀本部の人間と言ったところか。


『いつの間に飛行ユニットを?』

聞こえた声はガルル。階級章からだ。

「ソーサーは大きいし部屋に置いてたら【いかにも逃げます】で中尉、持ってっちゃうでしょ?」
当然です。ソーサーだとしても危ないというのに』
「危ない?」
『貴女の護衛が私の任務です。わざわざ怪我をするようなマネは止めてください』
「ちょっと前までソーサーやユニットで戦場飛んでたんだ。超上手いは中尉も知ってるじゃん」

 

そう、元々は参謀本部の人間ではない。

軍本部配属者で、戦場で命を張って戦っていた。

 

『…確かに貴女の組まれた部隊の生存率は非常に高く怪我も少なかった。だが貴女自身は!』

 

 

 

隊長ならば、後方指揮をしていればいいものを。

当時でも少佐という階級なのだから、前線になんて出なくてもいいのに。

 

 いつも、誰よりも傷付いていた。

 

隊員たちは勿論止める。彼女を傷つけてはいけない。

だがは笑って「大丈夫だってー」と、一番の激戦区に自ら飛んでいく。
そしてまるで、人身御供のように。全ての傷を一人で背負って帰ってくる。

ガルルも何度か合同作戦での采配と動きを見ている。

 

 

「いい加減にしろ!お前は隊長なんだぞ?!お前が死んだら隊員はどうなる?!」

「私が打ちたてた作戦だ。全てを見る義務が私にはある」

「お前はどれだけ兵達に慕われているか分かっているのか!?いつも飛んで行くお前をどんな気持ちで見ていると思っている!!」

 

血まみれに酸素ボンベ。

瀕死の状態で帰還する度に衛生局で入院生活の繰り返し。

そして治ればまた同じ事を繰り返す。

いい加減にして欲しい。見ているガルルも、隊員たちも、全員が辛い。

 

「バカだなぁガルル…」

「何がだ!馬鹿はお前だろう!!」

「隊員を守るのも隊長である私やガルルの仕事。みんなが死んだら私、泣いちゃうよ?」

 

 

どれだけ言ってもは止めなかった。

彼女の存在は入隊した時点で【軍の財産】だった。

だがこの単騎掛けをどれだけ言っても止めないから、上から無理やり参謀本部のデスクに回されたのだ。

死なせてはいけない。

そう判断され彼女は現在、星から出ることすら許されないほど軍に縛り付けられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


後方からは既にガルルが見える。だが他には誰もいない。
当たり前だ。通常のユニットやソーサーでの限界スピードを軽々と超えるように改造したのだから。
ユニット自体の性能が違うのだから追いつけるはずが無い。

「ねぇガルル…」

階級名はいらない。
チューニングはガルルにしか合わせていない。


『なんでしょうか』
「デスクって、つまんない仕事だよ」
『適所適材です。貴女は前線で采配を振るうよりこのケロン軍という軍の采配を振るうに相応しい』
「ははっ、それさぁ上に聞こえたら完璧に僻地に左遷だよ?」
『貴女の発言も十分上層部には響いていますよ。私の発言など聞こえぬほどに』
「私って真面目に仕事しすぎ?どうしたら降格されるかな。クルルでも少佐から曹長なんだから…ケロン軍はホントにヌルいよね」
『クルル曹長はケロン軍の【財産】です。軍も除隊などは考えていません』

 

「私は?」

『貴女も降格は有り得ても軍から逃げる事は出来無いでしょう』

「…だろうね」

 

 

 

 


がどんどんスピードを上げる。
いくら階級章からバリアを張っていてもそろそろ負荷がキツイ早さだ。

「もうガルルのユニット、耐久限界だ。落ちるよ?」
『ご心配痛み入ります。しかし代わりのユニットならまだありますから』
「でも追いつけないよね」

そう、現在ガルルが持っている飛行系ユニットのどれを使っても追いつく事が出来ない。
根本的に作りが違うしスピードの出が違う。


『大佐、それ以上のスピードはいくら特殊軍服でも限界です。減速してください』
「ほーら、また『大佐』って言った。ご心配どうも。『大佐』の階級章は強力なシールドでまだ平気なの」
『……。、何がしたいんだ?』

 

 

何がしたいのか。

何をさせたいのか。

 


「お、やっとタメ語になってくれたじゃん?」

『いい加減少しは俺を労われ。何をそんなに不機嫌なんだ?』

「さー?聞きたかったら止めてみなよ。軍きっての精巧スナイパーの腕でさ」

の言葉にガルルがぎょっとする。
何を、言っているのだ。

『馬鹿な!俺にお前を撃てと言うのか!?』
「飛行ユニットだけ壊してみればー?私は軍法裁判でちゃんとガルルの判断は正しかったと証言する」
『何をっ…!正気に戻れ!!』

 

 

イカロスは目標に近付いたから地上へ落ちた。

 

神の領域に踏み込んだ愚か者として。

 

ただの人間だったから。



「私はさぁガルル」

    そう、人間だったから。



「人間でいたいんだ」

   

愚かだと気付く事が出来る。





瞬間。
眼前のの飛行ユニットが爆発した。




っ!?」

このまま落ちればは確実に死ぬ。
だが高度と落下スピード、着地点を考えても間に合わない。


 間に合わない?

  違う。

  
 間に合わせろ!
  見殺しにして堪るか!!




「っあぁぁぁああああ!!!!!」

ガルルの叫び声が空に響いた。





























「で。何がしたかったのですかな?大佐」

ガルルは間に合った。
地上寸でのところでなんとかを抱きとめた。
と、思ったら。


「……。ガルル、顔怖いから言わない」
「先に言っておきますが、
私は既に怒っていますのでそのつもりで気をつけてお話下さい」

煙草を吸いながら明らかにイライラしているガルル。
緋色の瞳が凄い勢いでを貫いている。



必死の思いでキャッチしたは外見だけ精巧に似せて作られた廃棄処分のアンドロイド。
呆然としているガルルの所に、と言えば爆風に紛れならがの〜んびり降りてきた。

 

爆発は勿論フェイク。

ユニットは壊れていなかった。

 

まんまとしてやられた訳だ。

…?』
『あんなに叫んで私を助けるって感動!やっぱガルルはベタを外さないよね〜。乙女の憧れだよv』


降りてきたは自分の行動に心底感動していたものだから怒る気も失せるというものだ。
だが、失せていたのは
勿論その場限り。
瞬時にスイッチが入ったガルルが捕まえ、特製飛行ユニットもこれが怒りとばかりに粉々に破壊した。
こうして部屋に連れ戻して現在だ。


 

 

 


「あとでプル姐と乙女トークするから呼んでね…」
「何ゆえ?」
「だって私の事
!』って軍敷地内なのにあんな大声で呼び捨てだよ?感動じゃん。ガルルって私に惚れてたっけ?
「看護長は現在衛生局にて勤務にあたっておりますので無理です」
「プル姐もしんどいよねぇ。看護長だもん。衛生局長になれば少佐だし、早く奪っちゃえばいいのに」
「大佐、話を刷り返るおつもりか?」
「あ、ガルル灰皿取って。
あと真横に立ってるの止めてよ凄く怖い」


相変わらず話を噛み合せようともしないに苛々が止まらない。
だがここまで人を振り回すのは普段のにしてはやり過ぎている。取り合えず
修繕費が必要になってくるような事はしない。
灰皿を手元まで寄せる頃にはは既に煙草に火をつけていた。
大きく吸って、大きく溜息とともに紫煙を吐く。
暫くの無言の後。

 


「私の同期、全滅。終了のお知らせ」
「え?」


頬杖を付いて何事も無いように話し始めた

「まぁ元からあと1人しかいなけど。
内偵で調べてたらなんと同期。あれは軍法裁判で滅多打ちコースだわ」

 

【地獄の日】
の同期と言えば
『生き残り』がいない事で有名だ。
訓練生時代、宇宙船で移動中の時に敵性宇宙人に出くわしほぼ全滅した。
近くの星に緊急着陸した後も交戦は続き、何とか生き残ったのがを含め3人。
軍内でこの悲惨な事件を知らない者はいない。
だからの同期は異常とも言える特進階級をしている。異論を唱えるものは誰一人いなかった。
この3人はもう、伝説なのだ。


「金は人間を代えるよ。腑抜けに用は無いからさっさと上には報告するけど…訓練生達の夢、ぶち壊しちゃうよね」
「大佐…」


1人は激戦区にて戦死。
最後まで立派に戦ったと生存者から泣きながら報告を受けた。彼は英雄だ。

1人は官僚との汚職に不正金。軍費からも相当手を付けている。
階級が腑抜けにさせた。彼は今から目も当てられない絶望と蔑む地獄が待っている。


そして。最後の生き残り。

英雄を激戦地へ送ったのは彼女であり、腑抜けを地獄に落とすのも彼女だ。





「ガルル…。私はこんな安全な部屋で椅子に座って何しているんだろうね…」


 
−何でかな?

は良く思う。
自分の戦場での行動のせいで無理やり本部付き参謀本部に配属されてしまった。
しかもわざわざこの第8課まで立ち上げて課長だ。
自分の部隊構成をどれだけ好評価されようとも、軍人である限り死ぬのだ。はそれを最小限に抑えるだけで。



 
 いつから自分は人を評価するような大層立派な人物だと思われるようになってしまったのか。
  いつから自分は戦地へ赴く事すら止められるような重要人物扱いになってしまったのか。



「ガルル中尉、私はなんだと思う?」

  男?

  

女?

 

重要人物?

 

   財産?

 

 


「このケロン軍の誉れ高き軍人です」

ガルルの曇りの無い即答にが笑う。
望んだ答えだ。

「ありがと」

だから今日の事も大目に見てよと。
笑うにガルルも溜息しか出ない。





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



おまけ。




「今度ガルルの小隊を解体してさぁ、私を参謀に入れていい?」
「はっ?」
「だからぁ、トロロの代わりに私を入れて?って話」
「私の小隊にしては強豪過ぎる代打ですな。
結構ですから絶対に来ないで頂きたい。皆が気を使う」
「『課長さん』って事にしてさ。たまにはケロン星の外に出たいんだ。戦場行きたいよぉ」
「トロロ新兵の実力は大佐も良くご存知のはずです。彼はまだ幼い。今ここで代わられても彼のメンタルを傷つける事になります」
「思えばガルルってさ、クルルと良いトロロといい、
いつも子供が引っ付いてるよね?もしかして隠し子?」
「クルル曹長はともかく、トロロ新兵は
大佐が私の小隊に組み込んだのをお忘れですかな?」
「あぁ、それね。クルルに対抗出来るかってのもあったんだけど……ショック受けないでね?」
「はい?」
「書類だと私が組み込んだ事になってんだけど…トロロのガルル小隊行きも上からの命令なんだよね…」


固まるガルル。

ご愁傷様と笑う


「やっぱガルルさ、ショタフラ立ってる感じで上から見られてんじゃない?ブラコン疑惑も凄いし」
「なっ?!ブラコンだと!!」
「ギロロ伍長殿だよ。
宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊機動歩兵殿。毎回地球まで片道どんだけ掛かると…」
「それは私用で赴いただけであって大佐には関係無いことです」
「だぁから…」

が可哀想な目でガルルを見上げる。

『休暇の私用』でわざわざ地球ってどんだけ?って話じゃん…芋焼いてる弟に会いにって…」
「うちの事をとやかく言わないで頂きたい!!」
「そして煮物の芋が箸で掴めなかったってぇ?怖いオーラで何やってんの?」
「煮物はすべるのだ!!何が言いたい!?」
「別に?苛めるのが楽しいから。あと今日のこと黙っとかないと色々マズイのはガルルもだよーって」
「全く!!落ち込んでたのでは無かったのかっ」
「だから
テンション上げるためにガルル苛めるんだよ。軍内情報が私を素通り出来るとでも思ってた?甘いねぇ」


諜略課課長、大佐は今日もガルル中尉虐めに励んでいます。









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初ケロロ夢がいきなりガルルという、ね。管理人は紫のエリート仕官様に惚れます。
色々苦労するお兄ちゃんが好きです(笑)