「あのっ、ナッチーさんお願いがあります!」
随分深刻そうなモアちゃんが私の部屋に来たと思ったら。
「どうか私にもさんに会わせて貰えませんか?!」
「はっ?」
何故にちゃん?
●天使ちゃんの犠牲者続出?●
「なるほどねぇ…」
「最近おじさまは口を開けば『殿』の繰り返しでっ…その、恋をしたとか…」
ボケガエルがちゃんラブになっちゃって。
そのボケガエルに恋をしているモアちゃんとしては気になって仕方ない、と言う訳ね。
何でこんなに良い子で可愛いモアちゃんが『たかが緑のカエル』を慕っているかが私には理解出来ないけど…
「別に私に頼まなくても、モアちゃんは擬態出来てる訳だし。普通に会いに行けばいいんじゃないの?」
どこからどう見ても地球人なんだし。
全く不自然でも何でも無いと思うんだけどなぁ?
「あの…それも思ったんですが、私さんの姿形を知らなくて…」
「写真あるよ?見る?」
「あ、見たいです!あと…会っても何を話して良いか…。私の擬態は地球では『ギャル』と呼ばれ、怖がられるみたいで…」
「う〜ん…」
確かに『普通の小学生』がいきなり高校生ギャルから声かけられたら怖いかなぁ。
でもちゃんは完全別枠扱いでいいと思うけど…
「つまりモアちゃんは、ちゃんと会うだけじゃなくて話もしてみたいって事?」
「は、はいっ!そうです!!直接お会いしてみたいんです!!」
まさかの嫉妬…じゃないわよね。タママじゃあるまいし。
確かにいきなり初対面で二人になっても会話続かないかなぁ…
「モアちゃんって、意外と奥手だったんだね?」
「あぅ…お恥ずかしいながら…。星の断罪が仕事なのでナッチーさん達みたいに他星で長期に渡る相手が出来る事など無くて…」
シュンとしちゃったモアちゃん。
忘れてたけど、そう言えばこの子『恐怖の大王』だったわ。
ボケガエル達と違って身をわきまえる素晴らしい宇宙人だった。
「…じゃあ今から電話して聞いてみるね?」
「ありがとうございます!!」
「今からパソにちゃんの写真すけど…モアちゃん的にちゃんってどんなイメージなの?」
そこもかなり気になる。
姿形も知らないって事はボケガエルのヤツもまだ撮った事無いって事なのかしら?
あいつなら盗撮なんてお手の物って感じだけど…
あーヤダヤダ!!
「えっとぉ…おじさまが言うには『天使のように可愛らしい』で、タマちゃんが言うには『お菓子がとても上手』だと」
「で、モアちゃん的にそれを総合すると?」
「天使は見たこと無いですけどきっと素敵な女性なんだと思います。てゆーか、容姿端麗?料理上手?」
「ふむふむ」
「そんな方だと私は太刀打ち出来なくて…。てゆーか…意気消沈…」
あぁー!お願い暗くならないで!!
大体合ってるけどちゃんは『立派な子供』だから!
早く写真見せて誤解解かなきゃ!!
「はいこの子だよ!私の隣の髪の長い子!!」
個人的に一番可愛いお気に入りなちゃんとのツーショ!!
これでどうだ!!
「わぁ…」
「ね?大人と勘違いしてるみたいだけど、まだその子10歳なの」
モアちゃんが心配するボケガエルとのラブストーリーは絶対起きないから。
てゆーか、起こしてたまるもんですかっつーの。
「凄く可愛いですっ!!てゆーか、超妹属性!?」
そんな四文字熟語は無いけどね…
「何だか余計に会いたくなりました!ナッチーさん是非お願いします!!」
「はい了解」
写真のちゃんに余程感激したのか、モアちゃんが食い入るように見てる。
これは…最初の会いたいの意味合いも変わって来てるわね。
「…あ、もしもし今晩は。夏美でーす」
モアちゃん視線が痛いよ!
ちゃんと会えるようにするからそんなに見詰めないで!!
「あのね?ちゃんに是非会いたいって子がいるんだけど。今度の休み暇かな?」
何だか空気までビリビリ痛くなって来たよモアちゃーん!!
これで無理ってなったら黙示録が発動しそう!!
「あ、ホント?うん女の子でモアちゃんって言うの。……うん?ちょっと待ってね。モアちゃん」
「はい何でしょうか?!」
声でかっ…
「ちゃんが『折角だからモアちゃんの好きなお菓子作って行く』って」
「私のリクエストをわざわざですか!?良いんですか!?」
えーっと。
感激する程の事なんでしょうか…
「あの、そのっ、でしたらさんの得意な物で!私は何でも好きですから!!」
「…、だって?」
ケータイ越しに丸聞こえみたいで、ちゃんが『元気なお姉さんなんだねー』って笑ってる。
もちろん快くオーケー。
「じゃあ次の休みにウチでいいかな?時間はまた連絡するね。…うん、それじゃあお休みなさい」
よし!!黙示録は防いだわよ!!
「ナッチーさん…」
「休みが楽しみだね。ちゃん凄く良い子だからモアちゃんも大好きになるよ」
「ありがとうございます!てゆーか、既に虜ですvv」
ボケガエル以外でこんなにテンション高くキャーwと喜ぶモアちゃんなんて…
写真だけで凄いよちゃん。やっぱ天使かも。
「あ、ちなみに2つ禁止事項ね?」
「はい!さんに会えるためなら!」
「宇宙人なのはバレてもいいけど流石に黙示録は禁止。あとボケガエルの暴走を止めて。話が出来なくなっちゃうから」
「分かりました!おじさまは何とかしておきます!!」
モアちゃん、ついにボケガエルよりちゃんが上になったかぁ。
何とかするって、モアちゃんのやり方はナチュラルに笑顔で残酷だから想像するとちょっと怖い。
こうして春も麗らかで桜も綺麗に咲いてる日。
「いらっしゃーいちゃん」
「こんにちはなっちゃん♪」
今日もニパ☆っと笑顔の可愛い天使ちゃんが遊びに来た。
冬樹は公園に出掛けてるけど…まぁすぐ戻るだろうし。
「さ、リビングでモアちゃんが待ってるから」
「うん、お邪魔します」
あの後も電話で何回か連絡はしてある。
『何でに会いたいの?』と言う、当然の質問から結局ボケガエル絡みで宇宙人だって話ちゃったけど。
ちゃんのリアクションの無さは相変わらず健在で全く気にしてない。
ついでに『なっちゃん家って宇宙人の巣窟だね?』ってキッツイ事言われちゃったわ。実際そうだけどさぁ。
まぁ、ボケガエルはモアちゃんの『何とか』で静かだし。本当にいい日だわ。
「モアちゃん、ちゃんだよー」
さぁて、ご対面。
朝からドキドキ緊張してたモアちゃん。大丈夫かな?
「は、初めましてさん!アンゴル=モアです!今日は私事でのお呼び出しに来て下さりありがとうございます!」
バッ!と立ち上がって慌ててペコリとお辞儀をするモアちゃん。
「北城です。こちらこそあたしなどに会いたいだなんて畏れ多いお言葉、嬉しく思います。お会い出来て光栄です」
ニッコリ笑いながら同じくお辞儀をするちゃん。
何だろう、この固苦しい古風でガチガチな挨拶。
特にちゃん…アナタ10歳だよね?
ついていけないよ私…絶対無理だしこんな会話。
「ほーらぁ、二人ともそんな立ってないで!お茶出すから座ってて?」
「は、はい!」
「はーい。じゃあ対面に失礼します」
ガチガチなのはモアちゃんね…
目の前のちゃん見てドキドキほんのり顔が赤い。まぁ可愛いもんね。
こうしてお茶を入れて、ガールズトークを始めますか!!
「あ。ちゃんとお菓子作って来ました!モアさんのお口に合えばいいんですが…」
今日のピンクのトートバッグからは綺麗に一個ずつラッピングされたカップケーキ。
全部のリボンの色が違うなんてどこまで…
「わっ、すごく可愛いですv」
「ちゃん、ラッピングにこんなに拘らなくても…」
「なんかね、お菓子楽しみにしてくれてると思ったら気合い入っちゃって」
フニャっwと照れるちゃん。
今日もパーフェクトに可愛いわ!!
「色々種類作ったんで苦手なものは遠慮なく避けて下さいね?モアさんの苦手なものを聞き忘れてしまったので」
「あの、コレ全部…さんが私の為に…ですか?」
「はい、勿論モアさんの為です♪」
「かっ…」
「か?」
あー、完全にやられたわねモアちゃん。
「可愛いですさん嬉しいです!お持ち帰りしたいです!ギュッてしていいですか!?」
「へっ?わぁ」
はい、許可が降りる前にモアちゃんが我慢出来ずに動きました。
そしてちゃんは突然抱き締められてもリアクションは無し。うん、いつも通りだ。
コレだけ可愛い子にこんな事されて、ジッとなんかしてらんないわよね。
今日はメインがモアちゃんだから私は必死に我慢よ。
「あっ!ごめんなさい私ったらいきなり!我慢出来なくてっ」
「大丈夫ですよー」
慌てて謝るモアちゃんにニコニコしてるちゃん。
何とか落ち着いてようやくお茶会開催。
ちなみにちゃんは『突然の抱っこ攻撃』は睦実さんのおかげで慣れてしまっているらしい。
「モアさんの擬態相手は女子高生だったんですね?兄と同じ学校の制服でビックリしました」
「あ、あの!そんな敬語とかさん付けは無しで!」
「え、ですが…」
「ちゃん、モアちゃんはフランクがいいのよ。お友達になりたいの」
「はい!私もナッチーさんみたいに普通に呼んでください!てゆーか、新密度アップvv?」
あららぁ、モアちゃんも完全にちゃん欲しくなってるわ。
その気持ち、分かりすぎるもの。
「あの、でしたらあたしもさん付けや敬語は無しで。あたしだけ一方的にそんな話し方は失礼ですし」
「えっ!駄目ですか!?」
「駄目とまでは…ですが心苦しいですし…」
正直に言うわ。
この会話が心苦しいわよ!!
「はいはいもぉ!ちゃんはいつも通りでいいの。モアちゃんはこの喋り方しか出来ないから。いい?」
『…………』
何で二人とも難しそうな顔をするんだろうか…
暫くお互いどうしようかと沈黙して。
「えと、じゃあ…『モアちゃん』って…呼んでも、いいかな?」
可愛くもじもじしながらちゃんの上目遣い。
駄目だ!何故か私まで暴走しそうになる!!凄くよしよししたいっ!!
「勿論です!嬉しいですちゃん!!」
「あたしも素敵なお友達が出来て嬉しいよ♪」
はぁ…。
名前呼びだけでこんなに時間が掛かるとは。
私がクッションで居なかったら、どうなってたんだろうこのお茶会…。
「わっ、中にジャム入りです。美味しいv」
「良かったぁ!ノーマルはカロリー控えめにしたから。チョコチップやクラッシュナッツもあるからね?」
「凄いですねぇちゃんは。いつでもお嫁さんに行けちゃいます。てゆーか、将来安泰?」
「まだは小学生だよぉ」
うん、今日もお菓子が美味しいわ。
「私もちゃんのお菓子に見合う紅茶、頑張んなきゃなぁ」
「えっ!?なっちゃんの紅茶はどれにもに合うし茶葉のセンスも良いからからそんな必要無いよ!」
「そ、そうかな?」
「これ以上美味しくなっちゃったらがもっと頑張んなきゃいけなくなっちゃうから駄目!!」
もぉー!!可愛い事言わないで!!
この子私達を虜にしてどうするつもり!?
モアちゃんを見なさい!もうちゃん見ながらポワンvとしてるわよ!?
「あ、そうだ。モアちゃんに聞きたい事あるんだけどいーい?」
「はい。何ですか?」
「モアちゃんが黙示録を発動するはずだったんだよね?」
「あ、はい。一応そうなってます」
「本当にモアちゃんが地球壊すはずだったの?」
「はい…。あの、駄目でしたか?」
「ううん。【恐怖の大王】って言うから怖ぁいオジサンかと思ってたの。でもモアちゃん可愛いからお姫様みたいだなぁってv」
ボンッ!!て隣でモアちゃんが爆発した。
この素直な直下型爆弾に慣れるまでは私もこうだったなぁ…
そしてちゃんは爆発させても何事も無いように追撃する癖があるから怖い。
嬉しいんだけどすっごく恥ずかしいのよコレ!!
「きっとノストラダムスってネーミングセンス悪い人だったんだよね。【恐怖の大王】だなんてモアちゃんの肩書きに合わないよ」
「いえ、あの、でもっ、一応星を壊すので恐怖の対象ではあると思いますしっ」
「でもでも!もっと可愛くていいと思うの!【恐怖の女王】…【恐怖の美少女】…んー何か違う…」
「ちゃん、500年も前のオッサンが付けた事だからそんなに悩まなくても…」
「あんまり可愛い肩書きだと私も威厳が…」
モアちゃんが視線でヘルプを求めてるけど私も【デビル・サマー】だったから何とも言えません!!
これについてもちゃん、凄く怒ったからなぁ…『女の子に失礼!』ってプリプリしてたし。
「もぉ!昔のオジサンって安直!第一女の子に【恐怖】だなんて世界が許してもあたしはボツ!」
「あのちゃん!きっとその時は私も子供だったしパパも一緒だったからお髭のおじさまもパパだと思ったのかと!」
「モアちゃんのパパ?」
「はい!きっとちゃんもパパを見れば『確かに!』ってなりますから!!それに私の元の姿は怖いかもです!」
いやいや、モアちゃん!!
元の姿に戻ってもアナタ可愛いままです!!この子がもっと可愛く怒り始めます!
全く、怒り方も可愛い子って、ホントにちゃんは凄いわ。
でも冬樹以上に理詰めが凄いから恐いけど。
「あ、そうだ。モアちゃんにとってケロロが『おじさま』って聞いたんだけど本当?」
「そうなんですぅvモアはおじさまの為なら何でもします!」
えぇ、地球爆発もお手の物ですもんね…。
てゆーか、ようやくモアちゃんの当初の目的にたどり着いたのかな?
「なっちゃんから聞いた時に不思議に思ったんだけど、ケロロはカエルだよ?種族違うけど宇宙じゃ結婚出来るの?」
「け、結婚だなんてちゃん!!そ、そんなっ!モアはそんなっ!!」
「だってモアちゃん可愛いもん。ウェディングドレスとか凄く綺麗だと思うなぁv」
「ままま、まだモアはっ!おじさまの傍にいられるだけでっ!一緒にいられるだけで十分ですっ!!」
……光の速さで駆け抜けて遥か彼方に行っちゃったわね。
モアちゃんは純情乙女で恋をしてるから一気に結婚まで飛躍されて顔が真っ赤。
「それにおじさまはちゃんの事が好きなんです!!」
あ、ちょっと戻ってきた。
「ホントに?嬉しいなぁ、大事な友達(と言う名の食材)だもんv」
「…お、お友達…ですか?」
「うん!タママもケロロものお菓子のリピーターさんになってくれたの♪」
ほーら、モアちゃんが心配する事は全く無いのよ。
ボケガエル達はその他数多くのちゃんリピーターの一人でしかないんだから。
…あとは…ちょこっとだけ見えてしまった意味も含めて。
「もしかしてモアちゃん勘違いしてた?はモアちゃんの恋を応援するよ?」
「本当ですか!?」
「うん。だってモアちゃんは大切なお友達だし、あたしに出来る範囲なら全力でサポートするから!」
「ありがとうございますっ!!ちゃん大好きですv」
「もモアちゃん大好きだよぉv」
ボケガエル…ある意味聞いてなくて良かったわね。
たった今、最初から立ってなかったフラグがブラックホールに消えて行ったわよ。
ふっ、ザマァ…
ガラッ!!
「軍曹達!!皆も早く逃げてっ!!!」
「わっ!何よ冬樹ビックリさせないで!?」
「フッキーさんどうしたんですか!?てゆーか、満身創痍!?」
突然庭から冬樹の登場。
凄い焦ってるけど何事!?
「あ、ふーくんお邪魔してます」
ちゃんここはリアクション欲しい場面だから!!
緊迫感が一瞬で0になったよ!!
「え、あ…ちゃんこんにちは…」
「どうしたの?ふーくんが慌てるなんて珍しいね?」
駄目だ、冬樹の緊迫感も削がれて通常に戻りかけてる!まったりモードに!
これは良い方向の時と悪い方向の時があるんだってば!!
「それより何なのよ!何慌ててんの!?」
「そうだった!ブラックメンに嗅ぎ付けられたみたいなんだよ!とにかく早く隠れて!!軍曹は!?」
「おじさまでしたら地下司令室で手枷・足枷に猿轡と荒縄で重りつけてを付けて吊るしてみましたv」
モアちゃん、恐いよ…
とにかく冬樹の慌て方が尋常じゃないから。
話を聞きながら急いでボケガエル達の秘密基地へ走って。
ちなみにちゃんは足が遅いのでモアちゃんが擬態解除して抱えて飛んでます。
えぇ、異空間に入ろうが空を飛ぼうがリアクションは薄いわよ!?
『モアちゃん可愛い!プリ●ュアみたいv』と言う貴重なリアクション付きの感動発言はちょっと流しておこう!
多分それ所じゃないから!!
「公園に行ったらイラストライターってヤツ?何かその人に付きまとわれて!宇宙人の事も知ってるみたいだし!」
「あー、それ【MIB】だよね?映画で見たから知ってる!」
「あれは映画だから生易しいけど本物は恐いんだよ!僕達も軍曹やモアちゃん達も消されちゃうかもしれないんだ!」
「てゆーか冬樹、まさか家まで付いて来てるって事!?」
「多分もう来てる!!」
こうして秘密基地内に全員集合してみたらボケガエルが半死状態だったから急いで解いて!
「ちゃん、ちょっと今からお仕事しますから降ろしますね?」
「はーい。ケロロ、タママ、あと赤いカエルさんもこんにちは」
「赤いカエ…俺はギロロという名前がある!!」
「っちこんにちはですぅ!今日も甘いお菓子の匂いがするですぅ〜vボクに黙ってお菓子は酷いですよぉ?」
「そんな事無いよ♪後でタママにも渡すからね?」
「やったですぅ!」
「殿おぉぉおおおお!!会いたかっ「今それ所じゃないわよ空気読みなさいよね!!」
とりあえずボケカエル三匹を蹴り飛ばして!!
和んでる場合じゃない!!
あんた等も私達も消される危機なのよ!?
「ちゃん効果で浮かれてる場合じゃないでしょうが!!」
「モニター出ます!!」
オペレーター席のモアちゃんが急いでモニターに玄関を写せば…
「睦実さんじゃない!?ウソっ、なんで!!」
ちゃん!?
「うわぁ…むーちゃん羽根とか背負って何やってんの…耽美系気取り?馬鹿じゃないの?」
わぁ、凄い嫌そうな顔に恐い酷評。
って言うかちゃんこれってどういう!?
「もうやだ…むーちゃんのホントに妹止めたい…。あんな格好で公園にいたなんて恥ずかしすぎる…」
「ゲロッ!?殿の兄上殿であらせられますか!?し、しかし微弱ながら電波がっ…」
「うん…ブラックメンじゃないから大丈夫。随分電波で頭おかしいけど…」
嫌気がさしすぎたのか、ペタンと座り込んじゃったちゃん。
睦実さん、妹さんからのアナタの評価は…相変わらずです。
慰めようとちゃんをヨシヨシしてたら。
「ターゲットって言うかちゃんのお兄さん正面玄関まで侵入!」
瞬間、ちゃんがガバっと顔を上げた。
あ、あれ?何か…
いつも怒っても可愛いのに…何かちょっと…。
「ケロロ、ケロボールでペンとメモと…あと、包丁三本くらいと木刀出せるかな?」
「ゲロ!?出せるでありますがまた物騒な…一体何に…」
「愚兄への制裁」
ビシリ!と表情が氷のように恐い!!
「あぁ!?玄関が!!」
「えー!?なんじゃそりゃ!!」
チャックで開いたぁ?!ウチいつからそんなミステリーな家に!!
…あ、コイツ等来てからとっくにミステリーだったわ。
「モア殿!!迎撃ミサイル発射!!」
「はいです!」
「ちょっと!?ちゃんのお兄さんなのよ!?」
ヤッべそうじゃん!?とばかりにピタっ!と止まったボケガエルとモアちゃん。
けど。
「あ、別にどうでもいいよ?遠慮無くどうぞ」
許可降りちゃったし!?
いいのか悪いのか困る二人だけど、とりあえずやっぱり発射された!!
「全弾直撃!…ですがターゲット無傷です!!」
「ちゃんいくらなんでも!!てゆーか睦実さん死んじゃうから!!」
「えっ?ごめんなっちゃん、爆発でよく聞こえなかったv」
ニコっと笑うちゃん。
こ、恐い…
まさかコレ、ちゃんのマジギレ?
「俺が出る!!」
「ギロロ頑張ってね?終わったらのお菓子、良かったら食べてね?」
「悪いが甘ったるいものは苦手だ!!」
こうしてスペック無視の武器搭載でギロロが出撃。
そして瞬殺。ギロロ…
「…多分あのペンだよ」
「え?」
「むーちゃん一般人だもん。武器なんか無い。大量の紙に何かを描いてそれで攻撃防いだりしてるんだ。終わると白い紙凄いし」
「た、確かに敵は武器らしきものは何も…」
見事な観察眼に感心してたら。
ドゴォォン!!
「18もある特殊装甲が一瞬で!?」
「でもブラックメンじゃないから。みーんなが守るから大丈夫だよv」
ニパっ☆と一瞬だけいつもの笑顔に戻ってくれたけど、やっぱり一瞬でまた元のマジギレモードに…
てゆーか睦実さんが降ってきたぁぁあ!!??
今日ばかりは恐いですよ睦実さん!!ファンですけど本当にアナタ恐いですよ!?
「やっと見つけ…」
「誰を?」
余裕たっぷりでユラリと立ち上がりかけた睦実さんが止まった。
ちゃんのこんなに恐い声、初めて聞いた…。だって誰も動けないもん、恐くて。
「えっ…と…が、何で…?」
「ちゃんとお出かけメモに『なっちゃんと遊んできます』って書いてあったはずだけど。何処で遊ぶかは勝手だよね?」
睦実さんが冷や汗たっぷりに凄くたじろいでる…。
恐いんだ…ちゃんが恐いんだ!!
「あ、いや…っ、コレはちょっと色々理由があってさ!!ホラ、ね!?」
「がいないと思ったからこんな派手な事やったんでしょ。最近公園に行ってると思ったらそんな格好で…」
「えーっとコレは商売上っていうか趣味みたいな…」
「馬鹿じゃないの?、今本当に怒ってるんだけど…。言っとくけど今逃げたら後でもっと酷いよ?」
瞬間。
睦実さんの足元に包丁飛んで行くし!?
「あっぶね!?ちょっと!!」
「ここ、にとって凄く大切なお友達(と食料)がいる家。むーちゃん知ってたよね?」
ザクザク、と瓦礫を踏みしめながら木刀装備のちゃんが睦実さんに近付く。
睦実さんはどうやらこれ以上何かすると『何かされる』ようで、抵抗も攻撃も出来ないっぽい。
そして睦実さんの前でさっきのメモを…
「ふーくんへのストーカー。インターフォンも鳴らさず玄関まで入る礼儀の無さ。人様の家の玄関に変な細工をして不法侵入。土足で勝手に家に上がる。皆を恐がらせた。爆弾で家を壊した。あたしにそのペンの事黙ってた」
そのメモって制裁チェックだったの!?
「ただの犯罪者だね?いるって知ってたらしなかった?」
「しないよ当たり前だろ!?」
「ふーん、いなければするんだ。身内に犯罪者なんて嫌だけど、こんな事するなら警察に連れてく。変な事して、の友達恐がらせて…」
どんどん睦実さんに近付いていくちゃん。
こ、これ…ガチで睦実さん殺されるんじゃ…
「ゴメン!ちょっと出て来てよ!!」
ボワン!!
凄い煙幕っ!!
「ク〜ックック、お久し振りだぜぇケロロ隊長ぉ」
ん?一人知らない声。
てゆーかあの至近距離でちゃんは!?
「ちゃん大じょ…うぶ」
みたい。杞憂でした。
一歩も引いかずに睦実さんを睨み続けてる。
てゆーか…その黄色いカエルは…
「く、クルル曹長!?」
「ククーッ!!なぁにビビッた空気かもしだしてんだぶごふっ!!」
台詞の途中で黄色いカエルはちゃんの木刀で吹き飛ばされた。
顔面を横から行ったなぁ…遠慮なかったなぁ今の。
「俺だけじゃないんだって!クルルが仲間見つけたから折角だし驚かせようと思っただけなんだよ!!」
「つまり『クルルも同罪だから俺ばかり責めるな』って言いたいんだ。へぇ…罪擦り付けるんだ。…むーちゃん最低」
「ちょっ!?待ってよ!!人前だよ!?ほら夏美ちゃん達見てるよ!?」
「お…い、睦実っ…何でがっ…しかも…」
「クルル、日本で初めて作られたカレー今夜作って上げる。きっと美味しいよ」
「クッ?」
「当時のお肉は【カエル】。材料はもうあるから心配無いね」
「ククー!?」
今の一言で残りのカエルたちも怯えてるっ!!
そして。
思い切りちゃんがとびっきりの笑顔を見せて。
「『人様に迷惑を掛けるな』って。むーちゃん高校生なのにまだ知らないの?」
「ちょっと、?話し合おう!ねっ!?おいクルル復活してよ!!何か道具!」
「そのペンで何とかしてみれば?それにむーちゃん…に楯突いて、無傷で済んだ過去あったっけ?」
いよいよ睦実さんの顔色が悪い。
そっか、無いんですね…。
さぁ、大きく木刀を振りかぶって。
「みんなに『ごめんなさい』しなさいっ!!!」
こうして睦実さんと黄色いカエルが『ごめんなさい』を言う暇も与えられず…ちょっとこの先は言えません…
睦実さんごめんなさい、ちゃんが恐くて庇えないですよ!!
なんか凄い形で四匹目が登場しました。(影薄かった)
「本当にごめんなさい!愚兄とクルルが本当に!!本当にゴメンなさい!!」
制裁が終わったあと、ちゃんがさっきからずーっと謝り続けてる。
「ちゃんが謝る事じゃないからもう謝らないで?家も直ぐボケガエル達が元に戻すから」
「でもっ…、皆の前であんな暴力しちゃって…、嫌われたよね…」
ウルっと真っ黒な瞳が滲んでく。
いやまぁ、恐かったけど…あれはやられた事を考えたら釣り合ってると思うし。
「そんな事無いです!!私はちゃんが正しいと思っていますからちゃんと大好きです!」
「モアちゃん…」
「私もよ?別にちゃんが悪い事した訳じゃないし、調子に乗ってたならあのくらいはやらなきゃ!」
「なっちゃん…」
「泣かないで欲しいであります!みんな殿に救われた形となった訳でありますし!!我が小隊も四人目が揃った訳でありますし」
「っち格好良かったですぅ!ボクは可愛いのも格好良いのも好きですからぁv」
「ふん…実兄へのあの遠慮の無さは評価に値する。実質ここも守られた訳だしな」
「みんなちゃんが大好きなんだから。ね?」
抱き上げたらポロポロ泣き出しちゃった。
さすが天使さま。可愛いだけじゃ、やってけないものね?
(なぁ…俺等、ほっとかれる訳…?)
(がいるたぁ予定外も良いトコだぜぇ…何でGPSで確認しなかったんだテメェ)
(…ただの…クルルが出てドッキリで終了のはずだったのに…)
(クッ、とりあえずアイツのマジギレは半端ネェ事だけは分かったぜぇ…すげぇ一撃だったぜ…)
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モアちゃんの四文字熟語が思いつかない難しさ。