久し振りに真面目に(は嘘だけど)学校終えて帰ってきたら。
「むーちゃんの浮気者!!!」
可愛い妹は笑顔じゃなくて半泣きで絶叫。
取り合えず我が妹よ、包丁を置いてください。
●ある意味絆を深める方法じゃない?●
何なの一体?いきなり何事?
ただいまの前に突然浮気者扱いって何な訳?
「えっと、?ただいま…」
「お帰りなさい浮気者!むーちゃんなんて不潔だ!!」
…ごめん、全く意味分かんない。
分かんないからこそ、すっごく傷付くんだけど。
大好きな妹から突然不潔扱いってどストレートに刺さるよマジで。
俺は別に今はフリーだし。
浮気する気も無ければ相手もいない。
てゆーか『浮気』ってどっから出てきたの?
「なっちゃんがいながら…」
「えっ?」
『なっちゃん』っての主婦友な子の事だよね?
確か日向夏美ちゃん。顔は合わせた事あるし挨拶もするし覚えてる。
てゆーか基本、俺はに関わる人は全員覚えてますから。
「夏美ちゃんがどうしたの?」
俯いて涙目なは可愛い。
ただし怒りが半端無く伝わってくる上に包丁だから洒落にならない。
今日こそ俺は本当に刺されるんだろうか…。
「むーちゃんなんて綺麗なお姉さんに貢いで破産しちゃえ!大嫌い!!」
バタン!!
、叫んで自室に退場。
「えー…」
何がなんだかさっぱり分かんないけど。
俺の心のダメージだけは確実だ。あと一撃で死ねる。「大嫌い」の破壊力半端じゃない。
酷いよ、何て事言うんだよ。まず『破産』とか小学生の台詞じゃないってば。
それにお兄ちゃんが破産したらも大変なのに…まぁ置いておこう。
これだけ猛烈に怒るなんて久し振り過ぎて吃驚した。
で、こう言う時は…
「クールールー…」
「ククーッ。俺様は真実をに伝えただけだぜぇ?」
「どう歪ませて刷り込みしながら教えたんだよ。俺、突然すぎてモロ大ダメージ食らったんだけど」
クックと笑う黄色い蛙を鷲掴みにして俺の部屋へ。
「で!!何を教えて俺が誰に浮気をした事になってんの?」
ベットに放り投げて尋問開始。
のあの怒り方は一年にあるか無いかだよ?
ブレーカーが落ちた時と同レベで機嫌直すの大変なのに!!
「クック、自身が言ってたじゃねーかよぉ?」
「はぁ?…まさか夏美ちゃん?」
それこそ余計に意味分かんないぞ?
確かに夏美ちゃんは俺のファンだって言ってくれるけど挨拶程度しかしないよ?
混乱してたらクルルがパソコンに夏美ちゃんのデータを出した。
うわ、3サイズまでバッチリじゃん…結構胸大きいんだなぁ…
「どーやらはこの夏美とか言う女に相当懐いてるみてーじゃねぇか?」
「あぁ、仲良くしてくれてるし。は夏美ちゃん好きだけどそれが?」
「んーでぇ。勝手にペラペラ喋ってやがったが、はこの夏美とお前をくっ付けたがってる」
「あー…うん、そうみたいだけど…」
は夏美ちゃんを本当に大好きだ。それは分かる。
だからか知らないけど、異常に俺とくっつけだがってる。
確かに夏美ちゃんは可愛いけど、俺はまだが好きなんだよね。
…って言ったら『むーちゃん馬鹿じゃないの?』とバッサリ斬られたけど。
「あとはコレだ」
ピッと流れるのは俺がビデオ屋に入るトコ。
おいおいまさか…
『おい、ちょっとこれ見な』
『ん〜?あ、むーちゃんだ。コレって何屋さん?』
『ビデオ屋だ』
『ビデオ?レンタルならTS●TAYAが早いから頼めばいいのに。近いし』
『レンタル屋じゃねぇよバカが。個室ビデオ店だ』
『個室?何するの?』
『好きなDVDやビデオを一人で個室で見るんだよ。ククッ』
『むーちゃん自分のパソコンあるのに?借りて部屋で見ればいいのに…お金払ってまで変なの』
『お前がいるから借りれねぇようなDVDとか見てるに決まってんだろぉ?』
『が見ちゃダメなもの?別に部屋で勝手にイヤホン付ければ何の問題も無いよ?』
『お前がいきなり入って来るかもしんねーのに、見ながら安心してヌけねぇだろうがよぉ。ククーッ!』
『エッチなビデオ見ると何か抜けるの?気が抜けるとか?』
『……オメー、何にも知らねぇのか?これだからゆとり教育のガキは…』
『今はそのゆとり教育のツケで大変なの!!何でいきなりバカにされなきゃいけないの?!』
『知りてぇかぁ?』
『ううん、全然』
『大事なむーちゃんの事だろぉ?つーか聞きやがれ!』
『どうしたのクルル?』
「で、まさか…言ったわけ?」
「何屋かが知らねぇから1から教えてやったんだよ。余計な事までな。ククッ」
随分長い説明だったね。
クルル、よく途中で挫けなかったなぁ。俺なら面倒で止めるよ。
ついでに、多分一番クルルが教えたかった部分とか理解出来てない。
もし出来てたら俺、今頃罵倒だけじゃなくて確実にあの包丁刺さってるはずだから。
「はぁ…。じゃあは【勝手に俺がエロビ見て、そして夏美ちゃんという人がいながら!】…で、合ってる?」
「おんもしれぇ感じになったな。ククーッ!」
よし現状は理解した!
「クルル、の誤解を解きに行くから付いてきて」
「やぁなこった」
「じゃあ強制参加。じゃないとクルルも飯抜きだよ?」
「クッ、誤解も何も。ビデオ屋で男がする事ぁ1つじゃねーかよぉ?そこも捏造か?」
「どうせ中に入ってからも全部見てたんだから知ってんだろ?」
再びガッ!と鷲掴み。
俺まだ18歳未満だから、外でのエロ系は無理なわけ。
自慢じゃないけどパソコンの方がもっと凄いの入ってるんで!!
クルルのおかげでね!そこは感謝してるよ!!
「ー、聞いてくれる?」
コンコンとノックをしたら。
ゴン!!っと扉を木刀で殴る音がした。
ヤバい、相当だ…。
いくらかダメージを覚悟しつつ。
「は誤解してるから。クルルも嘘ついたから謝るって言ってるよ?」
「言ってねぇよ」
『クルル意地悪だから言うわけ無いもん!嘘付くむーちゃんなんか嫌い!!』
「頼むから出てきてよ。ちゃんと話そう?」
『浮気なんて酷い!なっちゃんが可哀想!!』
いや俺、AV女優に浮気なんて超高難易度スキル持ってないから…
そしてやっぱり夏美ちゃんが絡む。
部屋の中からはの嗚咽が聞こえる。
いつも大人だと思ってたけど、部分的に難しいお年頃に突入してたんだね。
「、入ってもいい?ちゃんと話そう。誤解してるから」
鍵は付いてないから入れるんだけど。
開けた瞬間、木刀が襲ってくる可能性が高すぎて開けれない。
何も言ってくれないって事は、入ってくるなって事か。
つまり、から出てきてくれるまで待つしかない。天岩戸状態。
「勝手に入りゃいいだろ?」
「間違いなく何処かを骨折するから無理」
こうなったら壁をを背もたれに座って、ひたすら待つだけ。
当たり前の事だけど、やっぱり泣かないで欲しいな。
は負けん気が強いから、人前じゃ滅多に泣かない。
俺に気を使ったりして我慢しちゃうのが悪い癖だと思う。
だからこそ、泣いてるが辛い。
早く勘違いを解いて、またいつもみたいに笑って欲しい。
「、じゃあここで話すから聞いてくれる?」
返事も何もないけど。
聞いてくれてるはずだから。
「は俺がエッチなDVDを見てたのがショック?」
違うのは、知ってるよ。
『…むーちゃんが…ひっく、に内緒な事っ、…してたからっ』
うん、そうだね。
内緒にされるのって、嫌だもんね。寂しいから。
「内緒にしてゴメン。でもわざわざお金払ってまで個室屋に行くと思う?俺にしてはバカらしいと思わない?」
そこはも疑問に思ったでしょ?
ただ今日は夏美ちゃんが勝手にブレンドされてて勘違いしただけ。
「。夏美ちゃんと俺は恋人じゃないんだよ?勝手にくっつけたら夏美ちゃんも迷惑する」
『…っ…は…』
「夏美ちゃんが大好きなのは知ってる。でも恋愛は個人の話。俺は申し訳無いけど夏美ちゃんは恋愛対象じゃない」
キツい言い方だけどそこは分かって欲しい。
『…は、なっちゃんに…』
また涙が出てきたのかな。
声がまた潤んできた。
「大好きだから幸せになって欲しいんだよね?大丈夫だよ。夏美ちゃんは怒ったりしない」
『…ホント…?』
「今日の事は黙ってればいいんだから。の気持ちはいつもちゃんと夏美ちゃんに伝わってるよ」
こんなに夏美ちゃんが好きなんだなぁ。
やっぱり女の子同士で安心するのかな?
俺男だし、分かってあげられない部分もこれからどんどん出てくるかもしれない。
なんか…ちょっと嫉妬しちゃうよ。
『…じゃあ、何で?』
「ん〜?」
『が見ちゃいけないの…見てたって』
「それがクルルの嘘。別にホラーでも何でも無いヤツ見てたし」
『…1人が良かったの?、邪魔?』
が邪魔なはずがないでしょ?
「感動系だったの。俺泣いちゃうから。の前だと恥ずかしいし」
本当にたったこれだけの話。
いい歳して妹の前でグズって泣くなんて恥ずかしいしじゃん。
1人の方が誰にも気にせず泣けるし。最近はクルルもいるし部屋も無理。
俺、お兄ちゃんだから見栄張りたいんだよ。
空回りしてばっかだけどね。
やっぱりが一番大切なんだよ?
しばらくしたら。
「…むーちゃん、ごめんなさい…」
真っ赤な目をした可愛い妹。
天岩戸が開いたよ。
「俺も勘違いさせるような事してゴメンね?今度はも一緒に見よう?」
よしよしと撫でたらまた泣き出した。
ごめんなさいって謝りながら。ホントに素直で可愛い妹。
「信じてくれてありがとう」
泣き止むまでぎゅーって抱き締めて。
「クルルも。あんまりに変なことするなよ?」
「クッ…面倒臭ぇから二度とするかっ」
クルルも渋い顔して反省したみたいだし。
泣かれると辛いの、よく分かっただろ?
さて。
が泣き止まないし、晩御飯はピザでも頼むか。
喧嘩は辛いけど。
仲直りした後に絆が深まるから、大切だよね。
(…んで、あんだけに大泣きされてもお前は結局エロ動画を消す事は無い、と)
(別に見てるのは知ってるだろうけど内容は黙っててよ?!)
(あぁ、でもフツーに知ってたぜ?)
(えっ!あれだけカモフラしてんのに何で!?)
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誰が部屋の掃除をしていると思っているんですか先輩。