超空間移動の音が聞こえたから、クルルが日向家から帰ってきたのかと思ったら。
「っち助けてですぅ!!」
落ちてきたのは汚いゴムまっ……失礼、タママだった。
●巻き込まれ損ってヤツ?●
「タママ?」
「はっ!お前は軍曹さんの宿敵・623!!何でここに!?」
ビシッと俺に構えるタママ。
えぇまぁ、ガンプラコレクターとしてはそうなってますけど。
そして【を好きだ】という意味に関しては俺は最強を誇る宿敵だろうけども。
「だってここ、俺との家だし」
いて当たり前じゃん。
仕事が無い日は極力いるし、今夕飯後だし。
「…ちょっとやりたかっただけですぅ」
俺の言葉にいじけるタママ。
別に悪いヤツじゃないし、苛めて悪かったよ。
「ごめんごめん。一応ビックリはしてるから」
「ホントですかぁ?ノリ悪いですぅ」
タママはケロロの手前じゃ、いつもあぁやって俺を敵対視してる風に言うけど。
ケロロがいなけりゃ別にここに確執は全く無い訳で。
のお菓子が好きみたいだし、相当仲良しで兄としては大いに結構です。
むしろタママは純粋なケロロの超ロリコン(地球人年齢は知らないけど)にヒき気味だしね。
「それよりっちは何処ですか!?」
「回覧板。奥様に捕まってなければすぐ戻るよ」
瞬間、タママが凄い蔑んだ目で俺を見た。
「アンタ…そのくらいヤレですよ…。これじゃあっち、どんどん中身老けるです…」
うん、それは分かってる…。身に染みて分かってる。
になんか俺関係で愚痴られたのかな。
「だってが人気なんだもん。俺はその前にタママがズタボロな理由が知りたいんだけど」
落ちて来た瞬間、本気で『叫ぶ汚いゴムまり』かと思ったし。
ゴムまりは叫ばないけどね?その位ビックリしてたって事。
たまにクルルが変な物作ってそれだけ転送するからてっきりソッチかと…
「モモッチですぅ!もう嫌です疲れるから!!」
何のこっちゃ?と思ってたら。
「ただいまぁ」
「あ、お帰り。お客さん来たよー」
「っち助けてですぅ!!」
「今晩はタママ。夜だから静かにしてね?取り合えず消毒しよっか」
うーん、ニッコリといつも通りマイペース。
このズタボロ怪我だらけのタママにその笑顔は無いと思うなぁ。
タママも静かになるしかない。相当テンション削がれただろうから。
ガサゴソと救急箱を探すを見ながらタママがポソっと。
「……ここの兄妹、ノリ悪いですぅ…」
「悪くないけど慣れがあるから。特には仕方無いって」
何せ宇宙人が住み込んでるんだから。
こうしてがタママを治療して。(必要性を感じないのは俺だけかな?)
タママはお客さんだから御茶の用意をして。
チョコンと小さく可愛く座って。
「さてと、準備万端vで、どうしたのタママ?こんな夜に来るなんて」
怪我には一切触れない。
あれだけ怪我して助けを求めながら来たのに…
触れてあげようよ。一人でずっ転けるにも程がある怪我だよコレ?
お兄ちゃん、そこはちょっとどうかと思うかな…
「っち!モモッチ何とかしてですよ!!」
「西澤さん?」
「そうです!ったく女の嫉妬の醜さと金にモノ言わせて!いい加減苛々するです!!」
クルルが俺達と暮らしてるように、タママも他の人と暮らしてる。
それが西澤桃華。
地球の半分は制圧しているであろう西澤グループの、資本家から見たら絶望する程の超お金持ちのご令嬢サマ。
あの武蔵野の西澤タワーは良く登るけど、ホント高いんだよね。何のためのタワーなのか不明だけど。
…まぁ俺としては規模がでか過ぎて現実味の欠片も無い。
「って桃華ちゃんと接点あったの?」
「んーん?西澤さんは6年生だし、前に話掛けたら逃げられちゃったから…」
だよなぁ…大人しいお嬢様じゃなかったか?
は4年生だし接点の作りようも無いだろうし。
「ボクのこの怪我は全部モモッチからですよ!?」
「え、マジで?」
「裏モモッチにやられて!八つ当たりで最近毎日でもうイヤです!!」
風の頼りで(って言うかクルルから)聞いたけどホントだったのか。
裏桃華の存在。
タママの二重人格を上回るパワーと嫉妬まみれだとか何だとか…
「なぁタママ、それってに関係あんの?」
「あるから来たんです!やっと本題を話せるですよ全く!!」
「何で?、西澤さんに何かした?」
「っちがフッキーと仲良しだから!!」
こうして事を順番に聞いていけば。
桃華ちゃんは冬樹くんが好きだけど話し掛けられない。
そのフラストレーションが裏桃華になりタママに八つ当たり。
は冬樹くんと仲が良いし、たまに買い物友達として一緒に帰る。
普通に話しかけるを見て、嫉妬から更に裏が良く出る…って感じかな?
「もうぶっちゃけますけど!っち、いつもフッキーと帰る時はモモッチ親衛隊に見張られてるですよ!?」
「んっ?」
あ、分かってない声が出た。
親衛隊とか言われても何の事だか分かんないんだろうな。
「、。桃華ちゃんの親衛隊って言うのは、ボディーガードみたいな感じだよ。銃持ってる筋金入りの」
「え?でも外じゃ銃って撃っちゃ駄目だよ。日本だもんココ。銃刀法違反とかで捕まっちゃうよ?」
「それを揉み消せる力を持ってるんだよ桃華ちゃんは。お金持ちだから」
「【二人が何も起こらないように】って!!金にモノ言わせて軍隊並みのモノ動かしてるんです!!」
確か西澤邸は日本政府に私的軍隊を置く事を許可されてるとか何とか…
すごい規模では命を狙われてるんだなぁ。
さて、どれだけ恐ろしい状況下にいるのか良く分かっていないへの説明は後回し。長引く上にタママがキれる。
「簡単に話を纏めれば、桃華ちゃんはへの嫉妬で軍隊動かしてるって事?」
「そうです!!っちはいつも一流スナイパー達に狙われてるです!」
これって裁判で訴訟起こしたら普通なら勝てるけど相手が相手だしなぁ。
第一、可愛いが命狙われるとか。
この平和ボケした日本のど真ん中で暮らしてる俺には想像がつかない。迷彩柄の軍人なんか見たくも無い。
「それで、タママは桃華ちゃんの怒りの捌け口に…と」
「そうです!ここんトコ毎日裏モモッチだしパワーの上がり方も異常だし!」
「ふむ、…これだけ聞いては?」
「へっ?」
いきなり振られて焦る。
途中から分かってないから、今も全然話を聞いてなかっただろ?
それでも一応一生懸命考えて。出した答えが。
「えー…なんか大変そうとしか…」
あっさり終了。
「はぁ?!ここまでボクの話聞いてたですか!?」
バシーン!とテーブル壊れそうなくらいの力で打っ叩いてキレるタママ。
聞いてただろうけど理解出来て無いだけだから!!
あんまりそういう行動はがっ!!!
「…タママ、『夜だから煩いのダメ』って最初に言った…」
「これを冷静にどーやって被害者のボクが話せますか!!」
「まぁまぁタママ!落ち着こう!ね?!」
怒り心頭ですっげー目が血走ってるけど。
はで喧しくて近所迷惑が嫌なのかムスッとするし!!
機嫌直すの大変なんだからこれ以上怒らせないでよ!!
「大変なのはっちのせいでもあるんだから止めてです!!」
「タママ煩い。ココ、西澤さんの家じゃなくて【の家】なの」
「う”っ…」
不機嫌なの声と言葉に青ざめるタママ。
【の言うこと聞かなきゃ何されても文句無し】
これが我が北城家を仕切るが勝手に決めて、いつの間にか揺るぎ無いモノになってしまった絶対条件。
まぁ余程ハメ外さなければ関係無いんだけど…ウチにいる間はコレを守らないとガチで命に関わる。
でもね、一応【俺の家】でもある事も忘れないでね?
「ごっ…ごめんな、さい、です…」
「ん。静かにしてね?」
キレたが何をするかはケロン人達は十分に知ってるはずでしょ?
【食材として捌かれる】っつー極刑しか無いんだからさぁ…。
「別には見張られてようが悪いことして無いから関係無いもん」
「で、でも!モモッチその気になったらっち蜂の巣ですぅ!」
何とかボリュームの下がったタママ。
それに何とか怒りは収まったらしいが溜め息を一つ。
「タママ、あたし西澤さんがふーくんを好きなの知ってるよ?」
「えっ?!」
「いつも帰りに誘う時とかふーくん見てるから。でも西澤さんは話し掛けるのも恥ずかしそうだったから、から誘ったの」
「何て?」
「『良かったら一緒に帰りませんか?』って」
「そしたらモモッチは?!」
「走って逃げちゃって結局それ以来。、もしかして悪い事したかなぁってショックだったの…」
「し、してない…し、結構なお膳立てですぅ…」
何だそりゃ。
はむしろ応援してんじゃん。
なのに見張られて命狙われるのは筋違いじゃないか?
「あんまり軍隊とか言われても分かんないのはごめんね?でもと西澤さんが喋ったの、ホントにこれだけなの」
「タママぁ?」
「あぅ…分かってるです。っち何にも悪くないのは…」
「西澤さんを怒らせちゃったならちゃんと謝りに行く。勝手にお節介な事して西澤さんが傷付いたならが悪いから」
は何にも悪いことはして無いだろうし、実際にしない。
それに冬樹くんと買い物で一緒に下校なんて前からあった事だ。
そーなるとぉ…?
「タママ、今更【裏桃華降臨】の引き金は?」
何か桃華ちゃんに我慢出来ない嫉妬するような出来事があったはず。
はぁ…指先一つで何でも出来る環境の子供って怖いな。
ウチのを見習いなさい!何でも出来る自慢の妹だから!!
「なんか…手紙がどうの言ってましたですぅ…」
「手紙?」
「フッキーからっちに。っちが超喜んでて…内容まではスコープで読み取れなかったからブチギれですぅ」
「?」
「ふーくんから手紙なんて一回も貰った事無いよ?普通にメールだし…」
小首をかしげる。うん、可愛い。
てか今はそうじゃなくて。
今時古風にラブレターも無いっしょ?
そもそも冬樹くんはに好意はあるけど恋愛じゃないからこそ俺が黙ってんだし。
…あったら俺が何もしないとでも?
「なんか三日前に貰ったどうので大騒ぎなんです!!」
「あ、うん貰った」
「「はっ!?」」
あっさり言った!!
ちょっとそれはどういう?!
「なっちゃんから新しい紅茶ブレンドのメモ。多分それじゃないかな?」
「こ、紅茶っ?」
「頼んでたら三日前にふーくん経由でくれたの」
「じゃ、じゃあモモッチってばナッチーのメモに嫉妬…?」
「わざわざ便箋に入れてくれたから分かんなかったのかな?手紙って言ったらそれだと思うけど…」
「でもいつもは渡されてもメモ用紙程度だって!!」
「ん?なっちゃんからプリクラとか可愛いシールとかも貰ったのーv」
見る〜?と嬉しそうに言うだけど、こっちは完全に固まるしかない。
特にタママ。
今の事実を果たして西澤邸に戻って桃華ちゃんに報告出来るんだろうか。
そして桃華ちゃんは信じるんだろうか…
「タママ…大丈夫?」
「ボク、多分どう転んでも凄いダメージを食らうです…身体的に…」
「どうしたの二人とも。暗いよ?」
そりゃ暗くもなるよ。
全くもぉ、仕方ない。
「」
「なぁに?」
「夏美ちゃんからの手紙をタママに貸してあげて?それを見たら桃華ちゃんも信じるから」
「そ、そうです!!それさえあれば!!」
大事なの友達(と言う名の食材)を、他人に消されるわけには行かない。
可愛い妹の為にお兄ちゃんが未然に防ごうじゃないですか。
「別にいいよ?でもただの紅茶のレシピだよ?」
「いいから貸してですぅううう!!!」
「ちゃんと返してね〜?」
こうしてタママはから手紙を引っ手繰って再び西澤邸に戻っていった。
「ホントにただの紅茶のレシピなんだけどなぁ?」
不思議そうな顔をしている。
さて、俺の仕事はこれからだ。
「、色々分かんない上で話が進んだから説明するね?」
「うん。分かるようにね?難しい事言わないでね?」
これが一番疲れるんだよね!!!
クルル早く帰って来いよ!映像有った方が早く終わるんだから!!
(オイお前等…何でどっちも頭抱えてヘバってんだよ…)
(あ…頭が疲れた…。クルルお帰り…ご飯は温めて…)
(俺も疲れた…眩暈がしそう…)
(何やってんだよお前等…)
●●●●●
曹長がいないと、二人は結構大変です(笑)