地球で北城睦実に出会い、俺様として寝床の確保は完了したわけだが。


「クルル、俺んちちょっと吃驚するかもしんないけど」

「クッ、トラブル&アクシデント。吃驚やハプニングは上等だぜぇ?」



お前の存在から既に面白ぇからな。





●それだけは、よろしくね?●







「ここだよ」
「ふーん?お前ガキの癖にいい部屋住んでんな」

歳の割には中々のマンションじゃねぇか。
どうやら一人暮らし…じゃ無ぇな。

「ただいま〜」
「あれ?おかえりだけどむーちゃん
何で?」
。何でって言うかここ、俺の家だし?」


玄関開けて奥からパタパタ出てきたのはチビなガキだった。
何故か
オプションに包丁なのが矢鱈怖ぇけど。


「あっ、もうすぐお豆腐屋さん来るから行ってきて!!二丁お願いね?」
「おーいー、俺さぁ、今帰ったばっかなんだしせめて制服を…」
「鞄も無い癖に。ほらまだ靴脱いで無いしょ?」

それだけ言うと、チビはお金を置いて部屋の奥に引っ込んだ。
睦実も諦めたのか、溜息を付いて再び外へ。
















チャリ置き場で豆腐屋(まだ歩きながら売ってんだな)を待ちながら。

「おいさっきの誰だ?まさか恋人とか言ったら流石にヒクぜ?」
「残念、妹。今10歳。可愛いでしょ?手ぇ出すなよ」
「流石の俺様でも守備範囲外もイイトコだぜぇ?ふーん、妹と二人暮らしか」


つーかさっきのチビがまさか睦実の言う
『吃驚する』ヤツなのか?
普通の地球人規格データからは何も外れてねぇ感じだけど。
まぁある意味
包丁を持って平然と玄関に出てきたのは吃驚したけどな。
…しいて言えば。


「お前、すっげー妹の尻に敷かれてんな?」

あのチビに完全に手駒扱いだしな。しかも『むーちゃん』って何だ。
たかが10歳だろ?

はね、しっかりし過ぎなのと…。やっぱ俺から見ても変わってると思うんだよね」
「まさかアレが吃驚とか言うんじゃねぇぜぇ?」
「クルルも1時間で分かると思う。直ぐに
『10歳じゃねーだろ』ってなるよ」
「ククッ、随分楽しそうな事を黄昏ながら言ってくれんじゃねぇかよ?」

随分遠い目で話しやがる。
まぁ期待してやろうじゃねぇかよ。

「俺と性格全然違うから。まぁ上手に付き合ってやってよ」
「付き合いも何も、アンチバリアで見えねぇだろうが」
「どうかな?俺がクルルを見えたんだし」

喋ってたら豆腐屋が通り過ぎそうになって。
慌てて睦実が走って行った。















の性格をいち早く理解するために!!》

そう言って睦実と俺様は今度はベランダから部屋に戻ってきた訳だが。

「何が分かんだぁ?」

睦実にもアンチバリアは張ってあるし、ベランダの鍵は閉まってる。カーテンもな。
楽しそうだけど何がしてぇのよお前?

「ま、見ててよ」

と、言って窓をコンコンとノックする。
音に気付いても見えねぇからビビらせるつもりか?
しばらくしてカーテンが勢いよく開く。


『お帰りむーちゃん。ここは玄関じゃないって
高校生なのにまだ知らないの?』


そこにはしっかり睦実を見ながら飽きれ気味のさっきのガキ。
今度は木刀持って登場かよ。まぁ泥棒だったら困るだろうケド、一々武器持ってんだなコイツ。
つーかマジで見えてんのか?
じゃあ俺様もだよな?こっちの存在にはシカトか?

「あははっ、ただいま。開けて?殴るの無しで」
『お豆腐は?』
「買ってきたよ。木綿で良かった?」
『絹ごしだよ…。もー、ご近所さんが見たら吃驚するって言ってるのに』

ぶつぶつ怒りながら鍵を開けて中に入れてくれた。

「ゴメンゴメン。はい、これお豆腐」
「ありがとう。ちゃんと靴は玄関にね?またベランダから帰ってきても、二度と開けないからね」

何だかさっき睦実の言ってたのが分かってきたぜぇ。
一時間いらねぇよ。

 

コイツ面倒臭ぇわ。





















、学校はどう?」

完璧に実年齢の倍は中身が歳食ってるこのとか言う妹。
睦実の肩に乗ってる俺は一体どう言う風に見られてんだぁ?

「むーちゃん言われたら人生終わったよね。あたしまだ10年しか生きてないのに勝手に幕降ろさないでよ」

キッチンが高いからか椅子に乗りながらチョコチョコ移動して料理をしてるチビ。
睦実はそれをだらし無ぇ笑顔で微笑ましく見つめて……手伝わねぇんだなお前。

「ねぇ、何でそんなに機嫌悪いの?俺何かした?」
「してるもん。取り合えず何で今日は早い事言ってくれなかったの?」

振り向きもしねぇ。こいつらホントに兄妹か?

「あぁ、買い物か。ごめん」
「そう!」

漸く振り向けばやっぱり包丁つき。
まさかのデフォか?

「むーちゃんはバイクあるのにズルいんだよ?」
「でも一応芸能人だったりもする訳。主婦の皆様に混ざって買い物はヤバいじゃん」
「あたしなんかランドセル背負って買い物だよ?どっちがキツイと思ってんの」
「でも俺が心配だから料理してくれんだろ?は料理スキル上がるしお嫁に行きやすくなるって。ね?」
「ほっとくとコンビニで済ませるから。部屋も汚いし…むーちゃんこのままじゃ本気でお婿さんに行けないよ?」
「コンビニの時はのお菓子も買ってんじゃん」
「割に合わない」


ククッ、面白ぇ。
どうやらこの妹はツンデレとかじゃなしに
ガチで睦実に飽きれてんな。
んでもって睦実は頭が上がんねぇ、と。

「クックッ、随分しっかりした妹じゃねぇかぁ?」
「ホントにね。頼もしい限りだよ。そんじゃクルルをビックリさせるか」
「ぁン?」

突然乗ってた肩から降ろされてガキの方に持ち上げられた。

。お兄ちゃんの方見て?」
「なぁに?」
「ほら」

ズイッとチビの方に俺を差し出すが。

「…………。だから、なに?」

このリアクションは見えてねぇんじゃねぇのか?

、少しは俺に興味持ってよ。たまに寂しくなるんだけど…。黄色い蛙なんて珍しいでしょ?」
「むーちゃんの趣味ってガンプラでしょ?てゆーか、コレ蛙なの?」

まぁ、地球じゃ蛙に一番『近い姿』ってだけだからな。

「蛙だよ。しかも巨大化してるの。眼鏡かけてるって凄くない?」
「黄色い蛙って毒とか持ってるんじゃなかったっけ?趣味悪いねむーちゃん。そんなぬいぐるみいらないよ?」
「あげないよ。それに、ぬいぐるみにしてはツルンとしてない?」

怪訝そうな顔をしながら、ようやくチビが椅子から降りてこっちに来た。
つか、遠慮なくすげー見てくるんだな。俺様に穴空くぜ…
あと一つ言いたいのは、
やっぱ包丁は置いて来い。

「むーちゃん」
「なに?」
「ナマモノは冷蔵庫に」
「入れんじゃねぇぞ?!」


お前、俺を『蛙』として食べる気か!?


「わ、喋った。どこで売ってたの?電池ドコ?」
「相変わらずリアクション薄いよねって…」
「おい睦実降ろしやがれ!こんのガキがぁ!!」
「むーちゃん、テーブルに置いちゃダメだよ怒るから」
「俺様は物じゃねぇよ!」
「じゃあもしゃがんでね。はいクルル」

泣かしたろかこのガキ!?

「いいか俺様は宇宙人だ!名前はクルルでケロン星っつートコから来た侵略者なんだよ!!」
「宇宙人?巨大化した蛙じゃないの?日本語だよ?」
「勝手にどう思ってもいいがな、取り合えず食材扱いはすんな。俺様食っても腹壊すぜぇ?」
「むーちゃんホント?触ってもいーい?ぷにぷにで気持ち良さそう…」
「クルルがいいなら。ほらもちゃんと自己紹介しなよ」

ったくなんだこのマイペースは。
つーかガキだから言葉の意味が理解出来てねぇのか?
チッ、これだから低知能は面倒臭ぇ。

…とか思ってたら。


「先ほどは失礼致しました。北条睦実の妹、と申します。宅の睦実とはどのようなご関係でしょうか?」


いきなりキッチリ正座されたぜ…
何なんだコイツはホントに?

「そこまでしっかり挨拶しなくていいから…クルルは俺のダチ」
「え、お友達?なんだ…食べれる蛙だと思ってたのに」

だからシカトを決め込んでたのか。
って、オイオイ。
もしそうだとしても
兄貴の肩に食用蛙が乗ってても【ノーリアクション貫いてた】ってのか?
食物連鎖の頂点にいるんだなお前。そんで俺は食われる側か。


「蛙は鶏肉に似てるって聞いた事あるし。
捌けるかな?って思ったけどお友達ならダメだね」

 

ニコっと笑いながら言ってる事滅茶苦茶だぜ…


「クルルより美味しいものは絶対あるから。あと、クルルは今日からここで一緒に暮らすの」
「へ?あたしの承諾は?」
「だってに先に言ったらダメって言うだろ?それか今みたいに食べようとするし…」


まぁ食われる前に色々コッチも武器あるから応戦はするけどよぉ。
蛙を見て直結で『食材』に結びつけるってどうなんだよ。


「んー。別にちっちゃいし、どうせむーちゃんの部屋にいるんでしょ?会話が出来るなら迷惑じゃないよ」
「クック、物分かりがいいじゃねぇか」
「クルルって名前?呼び捨てでいーい?あたしも呼び捨てでいいから」
「宜しく頼むぜぇ?ちなみに居候だが家事はやんねーけど」
「やらないなら汚さないでね?」

流石は睦実の妹だな。感性が俺好みな感じでオカシイぜぇ。
確かに
食材扱い冷蔵庫行きはビビったけどな。
こうしてはまたキッチンに戻ってまたチョコチョコ椅子に乗って料理を再会。


「はぁ、良かった。の了解も取れたし。吃驚しただろ?」
「食い物として見られたのは初めてだったからなぁ。まぁでも所詮ガキだ」
「ナメてると怖いよ?見事に捌かれて食卓に並ぶクルルは見たくないしね」

それ以前にガキが蛙を調理なんか出来んのかよ…。
ま、俺様は何もしねぇしどうでもいいか。

「あ、そうだクルル。今日からここに住むならルールがあるから守ってね?」
「あ?」
「ブレーカーやヒューズ飛ばしたら言い訳抜きで
丸焼きにするから。むーちゃんは分かってるもんね?」
「…………」

それだけ〜♪と言って鼻歌交じりに料理を再会。
ヤベェな、機械いじりが好きなのにそれは中々出来ねぇ注文だぜ?
一般家庭の電力じゃ俺様の発明品作成時には相当追いつかねぇだろうし。

「オイ睦実…」
「あー、うん。…落ちたりすると…ちょっと厄介になるから、出来るだけ居ない時に」
「チッ、なら昼間か」
「そうなるかな。あと夜は静かに。俺は学校サボれてもはまだ
義務教育中だから」


………。


「面倒臭ぇ妹だな…」
「でも可愛いだろ?手は出すなよ」
「だぁからガキに興味無ぇよ」


さっさと隊長探さねぇとな。

こりゃ睦実をしっかりコキ使ってやんねぇと。








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先輩をシスコンに仕立て上げるために妹さんに登場して頂きました(笑)